彼女は、僕の手を引っ張るとダンスフロアを囲むようにあるテーブル席に案内しました。彼女が椅子を指差して「座って」というようなジェスチャーをします。手に持っているのは彼女の愛用のiphone。多くの子たちが誘われるのを待ちながら手机(スマホ)をいじっていますが、彼女も僕がキョトンとしていると手机を使って微信で連絡をすぐにしてきました。

「你可以买我的时间吗?」 (私の時間を買ってくれませんか?)

舞女14

舞庁で僕は舞女の子と一緒にテーブル席に座ったことはまだ、ありませんでした。大陸の子たちは台湾以上に拝金主義な感じがあって、気持ちよりもお金という印象が強く、正直つながりを求める気にあまりなれなかったこともあります。しかし、彼女の嬉しそうな顔を見ると断ることはできませんでした。

「まあ、いいか」

彼女に指でOKサインを出すと腕をからめて、僕とともにベンチシート方の椅子に座りました。このベンチシート型というのが後で気がつくのですが、実は彼女と微信を使って会話するときに大いに役立ったのです。テーブル席はテーブルを挟んで二人ずつが向き合う4人がけが一般的ですが、彼女と僕は並んで横に座るという形になりました。

舞庁4

舞庁では舞女とテーブル席で話すときは1時間100元の少费が基本的なマナー。もちろん、それ以上でもそれ以下でもいいのですが、舞女の子との相性や気質にもよります。

舞女は舞庁に雇用されているわけではありません。ショーダンスをする一部の舞女だけは雇用されて専属ですが、それ以外の壁にもたれていたり、ソファや椅子に座っている子は基本的に自由に舞庁に来て、踊った男性からもらう少费(1回20元)とテーブル席で話す時間(1時間100元)でもらう少费が基本的な稼ぎとなります。テーブル席にいる間は他の男性はその舞女には声をかけることができない、この間は何度跳舞してもその分の少费は支払わなくて良いという暗黙のルールがあります。

従って、舞女の子にとって一番、効率が良いのは跳舞で声をかけられ、あとはテーブル席で話をすることです。 舞庁の入口附近には飲料やお弁当の類、簡単なスナックなどが売っており、舞女の子は基本、外部者ですから、男性客と同じようにここで食料や飲料を買っています。テーブル席に座ると列車の中の売り子のように舞庁の係員がワゴンに積んだ飲料や食料を売りに来ますから、それを買うというしくみです。まあ、テーブル席に座った場合は舞女の子が指をさして「これ飲みたい」とか「これ食べたい」と言うので、その支払いは男性客がします。ただ、KTVのようにボッタクリ価格ではなく、それなりに適正な価格なので大きな負担にはなりません。基本、入口の売り場ブースで買うときと同じ値段です。

 スタイルの悪い子ややぼったい雰囲気の子はいつまでも売れ残っていることが多いです。舞庁といえども徹底した競争原理がはたらいており、踊ってもらえなければ、彼女たちはまったく稼ぎがありません。
上海舞庁2

舞女の中には容姿のあまり優れない子、化粧や服装のセンスが悪くてやぼったい子、年増の女性(30~50歳ぐらいまでいます) もおり、まあそれなりのニーズはあります。しかし、そのような舞女たちは基本的にややボディランゲージサービスを得意としていて、男性客にしなだれかかったり、膝の上に乗って座ったりという子も見受けられます。それで時間を2時間、3時間と延ばしていくというやり方です。以前あった黒舞庁ではもっと過激なサービスもしていましたが、今は公安の取締りも厳しく、そのようなことはほぼありません。

 黒舞庁ではドレスの中に手をいれさせての摸摸(おさわり)や手や口を使ってサービスする子もいましたが、今はそのような舞庁はここ上海では基本的に姿を消しつつあります。
舞女11

さて、テーブル席に座った彼女と話をすることになりました。話と言っても彼女は聾啞の女性ですから身振り手振りと手机の微信による聊天(チャット)と実際にはなりました。横に座りながら、手机(スマホ)で会話をするという感じで、僕にとっては初めての体験でした。奇妙な感じもありましたが、彼女は慣れているのでしょう。まったく、自然に言葉を入力していきます。

「你的名字呢?」 (あなたの名前は?)

「我是日本人。我的名字是XX、你叫我、XX」 (僕は日本人なんだ。名前はXX、僕をXXと呼んで)

「你是日本人吗?」 (あなたは日本人なの?)

「嗯嗯」 (うん、そうだよ)

「我的名字是莉莉」 (私の名前はリリ)

「你明白了、我是聋哑妹子」 (わかったと思うけど、私は聾唖の女の子なんだ)

「所以沟通不很好的、不好意思」 (だからコミュニケーションがよくとれないの、ごめんね)

「但是我讨厌被同情」 (でも、私は同情されることがとても嫌なの)

「因为我自己决定着很强」 (なぜなら、私は自分自身で強く生きると決めてるから)
 
手机

彼女と微信で聊天を続けていくうちにいろいろなことがわかってきました。さっき、1曲目を踊った後に50元を僕が渡したときに、やはり同情されたと思ったこと。でも2曲目を続けて踊るならその少费は妥当だと思い、続けて2曲踊ってくれる人はまずいないから、すごく嬉しくなったこと。だから、もしかしたら、テーブル席に座っても彼女を指名してくれるかもと思ってここに僕を連れてきたこと。

「因为我是聋哑人、所以我和跳舞的人几乎不在」 
(だからね、私は耳が聞こえないし、言葉もしゃべれないから踊ってくれる人はめったにいないんだ)

「一晚三个人左右在就行了」  (一晩で三人もしてくれればって感じ)

「可是你跟我跳舞二次、很幸运了」 (でもあなたは二回も踊ってくれて、すごくラッキーだよ)

「 与我在一起、因为他们无聊的」 (みんな私と一緒にいてもつまんないからね)

「你也无聊吗?」 (あなたもつまんない?)

「不是、我是日本人、因为我也不说中文、可以一点的」 
(そんなことないよ、僕は日本人だし、中国語も できないからね。ちょっとできるぐらいさ)

「所以我也用微信比较好 」 (だから微信を使ったほうがありがたいよ)

「天天我的生意是不好、今天我是很高兴吧」 (毎日、すごく稼ぎが少ないから、今日はとってもうれしいよ)

彼女はとにかく日頃、一緒に踊ってもらえることが少なく、一日あたりの稼ぎはがんばって100元ぐらいという感じでした。僕はたまたま、彼女に声をかけたけどそれは言葉を滑らかに介してコミュニケーションがお互いにうまくとれないということで、ある意味共通項があり、それは彼女にとってはありがたいことだったようです。さらに彼女が知り合った外国人は僕が初めて。まあ、こんな場所にめったに日本人や欧米人は来ないだろうということもあるけど。

すると彼女が再び、僕の手を取りました。そして今度は微信ではなく、目を見て「アー、アー」という感じで一生懸命話しかけてきました。よくわからなかったけど、彼女の仕草からもう一度踊ろうという意思であることが感じ取れました。音楽は聞こえないし、テーブル席で100元の少费を払うから、踊ってももう少费はもらえないことを彼女はわかっているはず。

相変わらず、ダンスフロアの周りにはまだ、声をかけられていない舞女の子がいっぱいいます。

 過激なサービスがあった黒舞庁がほぼ壊滅した今、容姿端麗なこと、化粧や服のセンスがいいことが選ばれる最も大きな基準。そしてテーブル席につくことができるのは、さらに会話がうまく、話していて飽きない子でしょうか。誰もが打工(アルバイト)気分で来ることはできますが、男性に選ばれるのは簡単なことではありません。
舞女12

「为什么?」 (どうして?)

僕は急いで行こうとする彼女に微信を打ちました。彼女はそれを見るとすぐに返信をしてきました。

「因为我是舞女」 (私はダンスガールだから)

そう入力すると彼女はドレスの胸の谷間にiphoneをはさみ、再び私の腕に手を通してきました。 ダンスフロアーにはいつものようにバラバラと少しずつ即席のカッップルが集まりだしました。そして灯りが少し落ちるとともに彼女は僕の首に手を回しました。

かかった曲は Mariah Carey の名曲"Without You" 。



No I can't forget this evenin'
Or your face as you were leaving
But I guess that's just the way
The story goes

よくわからない時間が流れているけど、確かに僕はこの芊芊に面影が似た莉莉を少し昔から知っていたような気がしました。「話し言葉」というツールが彼女との間には存在しないものの、それに代わるものはきっとある。

マライヤの名曲を聴きながら、いろいろな思いが交錯していました。

舞女8

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