「ダメ、絶対ダメ!だって子供みたいな顔してるから、ダメ」

「それに目がすごく小さくなって半分ぐらいだから、本当は」

僕の「一度、スッピン見せて」という問いかけに日本であの夏の終わりに会った彼女は茶目っ気たっぷりに答えました。彼女はいつも完璧というぐらいのメイクでとてもチャーミングに仕上げています。アニメに登場する女の子たちのようにちょっとタレ目気味に瞳を大きく見せるようにメイクアップしています。

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「何分ぐらいメイクするのにかかるの?」

「何分っていうレベルじゃないよ、長いと3時間ぐらい」

「えーっ、それはすごい!そんなに時間かけるの?」

「うん、そうだよっ」

彼女は#OOTDをいつも意識していている感じもあって、僕が会った子の中では最もスノッブな子の一人。それとメイク系の学校に通っていたこともあって、センスがいいというのがピッタリな感じで、高級なブランド品に身を包んでいるわけではありませんが、トータルコーディネートがうまいという印象でした。

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彼女はネイルアートや長いつけ爪も大好きで、指先はいつもキラキラ。

「そんな爪で洗い物とかできるの?」

「できるよ、慣れれば平気」

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「それにさあ、そんなにメイクで変わるもんなの?」

「変わるよっ、メイクとったら本当に中学生みたいな顔になっちゃう」

そんな話をしていると彼女が急に私の顔を見て話しだしました。

「ねえ、ひとつお願いがあるんだけど」

「何?まあ、無理なことは無理だけど」

「そんな大ごとじゃないよ、実はね、夜中の2時から始まるテレビ、集中して見ていい?」

「えええ、そんなこと!何の番組なの?そんな時間に」

彼女はちょっと恥ずかしそうに言いました。

「実はアニメなんだよね。田舎に都会の女の子がやってきて、自然に溶けこんでいく話」

「そんなの全然OKだよ」

彼女は「やったー」というとソファにごろんと横になって大きな50インチのモニターのスイッチを入れました。「のんのんびより」というアニメで田舎の分校を舞台に4人の女の子ほっこりとした日常を描いた作品で、僕も初めてそんな作品があることを知りました。

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それと正直、僕はびっくりしました。

見た目は完全におしゃれでちょっとしたギャル風とお嬢様風を中和したような雰囲気なのですが、彼女はどちらかというと街でたまったり、クラブで遊んでいたりというタイプではなく、マンガやアニメ、声優さんたちの動画などが大好きでニコニコ動画とか、よく見ているとのこと。最初にあったときの印象と大きなギャップがあって、とても趣味そのものが可愛らしくて、少しばかり微笑ましくなりました。

彼女はどちらかというとインドアの趣味の方が中心でアニメの雑誌や漫画なども同人誌を含めて結構、買うようでした。部屋にもう置く場所がないとか、結構、本屋で私のような子が同人誌買うのは勇気がいるんだよとか、本当に楽しそうに話し出しました。

天真爛漫。

多分、台湾で出会った芊芊や戀戀のような底抜けに明るくて、自由奔放で気持ちの正直な子が一緒にいて一番気持ちが楽なのでしょう。美人でも高慢だったり、こちらが気を使わないといけないような子、わがままな子などは疲れてしまうにちがいがありません。

とにかくいたずらっ子のような顔をしてエヘヘと笑うようなしぐさはあの台湾で奇妙な日々を一緒に送った芊芊とそっくり。それとすごく気がきく子で「何か飲む?」とか「食べるもの買ってくればよかったね」とか小動物のようによく動くところも似ていました。

 おばあちゃん大好きな彼女が一緒に食べて美味しかったというトルコ料理のケバブ。彼女の勧めで中近東には行ったことがない僕は初めて食べました。「美味しいでしょっ」とい言いながら食べる彼女の言うとおり、とても美味しくて、また、食べたくなる味でした。
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とにかく思ったらすぐに行動とか明日できることは今日やらないタイプの典型的な瞬発力型の彼女は、チャレンジに少しばかり臆病になり、安定的な生活に慣れてしまった僕ののようなオジサンにはすごく新鮮そのものでした。

TVアニメが終わって、二人でyoutubeを見だしたのですが、その時に代表的な台湾ムービーの「海角7號」や「KANO」の話をしたところ、とにかく好奇心が旺盛で、参加型の声優さんたちのイベントやライブにもよく行くという彼女はいろいろなことに興味があるようで、とにかく楽しそうに微笑みながら聞いていました。

そしていろいろと話をしていると彼女は急にニコニコ笑いながら洗面台の方に向かって行きました。

「いいよ、メイクとってあげる!」

「ちょっと待ってて」

「こっち来ちゃあ、ダメだからねっ」

僕は突然の展開にびっくりしましたが、また、youtubeを見て待つことに。

15分ぐらい経ったでしょうか。

「はい、とったよ、もう、特別大サービス」

最初は恥ずかしそうに手で顔を抑えていましたが、手をとると彼女が言うように、少女のような笑顔の子がニコニコしながら立っていました。メイクしていた時の彼女も十分魅力的でしたが、スッピンの時の彼女は純粋無垢な真っ白なキャンバスのようなイメージで印象が確かに違っていました。

「恥ずかしいなあ、外でスッピン見せたのなんか、ほとんどないんだからねっ」

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でもカラーコンタクトはまだつけたまま。

瞳はダイヤモンド。ちょっと照れながらもニコニコと微笑む彼女の笑顔は輝いていました。



幾千粒の雨の矢たち 見上げながら うるんだ 瞳はダイアモンド

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