この日は特別な夜となりました。なぜならば、20人は入る包廂だけあって、次々と人の出入りがあって、極めて賑やかな夜になったからです。しかし、支払いは芊芊の分と包廂の小費のみという信じられないような展開でした。

芊芊はまったく人見知りしない子でした。 さらに驚いたことにとても頭の回転の速い子でした。先ほどの幹部を急に呼び寄せた時も機転がきいていましたが、てきぱきしているというか、物事の判断が速いのが特徴でした。酒店の子たちはどちらかというと優柔不断の子が多く、意思も強くない子が多いです。従って、友達に誘われてこの仕事を始めたという子やずるずるいつまでもやめられない子が多く、また、客に対してもはっきりとNOと言える子が少ないため、客も引き際がわからず、女の子が泣き出してトラブル発生ということも、PT妹には結構あります。

しかし、芊芊は違いました。自分の意思をしっかりもち、仕事に対しての強い目的をもっていました。

彼女と話をしていくうちに分かったのですが、彼女は台中の出身で高中の時は学年のリーダーでした。法律を学びたくて大学を目指したものの、台湾大学や政治大学などの國立大学には届かず、結局、入試に失敗して台北の陽明山の上にある私立大学に入学していました。しかし、彼女の家も台北で一人暮らしを娘にさせ、私立大学の学費を出す余裕などなく、彼女は家を飛び出すような形で台北にやってきていました。

彼女が最初に住んだのは石牌の近くで、ここは大学生に部屋を貸す雅房(トイレやシャワーが共同で部屋のみ)が多く、ここに月6000元ほどの家賃を払い、夜は士林夜市でTシャツを売る仕事を打工でしていました。しかし、時給は90元+歩合制。大学が終わって夜の12時頃まで働いても500元になるかならないかの収入では、生活するのがやっとであり、学費を払う余裕などあるはずもありませんでした。台湾には奨学金のような制度があって、大学や銀行に手続きすれば、卒業後にお金を返すことができます。しかし、親の反対を押し切って台北にやってきた芊芊は誰も保証人がおらず、大学の1年級の寒假(冬休み)に酒店で働くことを決心したのです。

そして、7月から始まった暑假に彼女は再び、酒店に戻ってきました。
次の学期の学費と半年分の生活費を稼ぐために。

「芊芊、你是真的大學生嗎?」
(チェンチェン、本当に大学生なの?)

あまりに包廂での手際がよく、動きもいいので、最初すぐに芊芊に訊きました。彼女は「真的」と言って、包裏(バック)から学生證をさっと出しました。それはちょうどクレジットカードのようなプラスチックの学生證で彼女の写真と本名がそこにはありました。彼女の大学に入ったばかりの頃の写真なのでしょう。そこにあるのは、黒髪で化粧気もまったくなく、清純な女子大学生の顔でした。

そして、新しく入った2人も芊芊の学生證をのぞき込んでいましたが、彼女たちは本当に何も知らないのでしょう。2人とも芊芊のまねをして包裏から同じように学生證をゴソゴソ出して私に見せ始めました。彼女たちは泰山という台北と桃園の間にある所にある技術学院に通っていました。芊芊と同様に印象がやはりちがって、すっかり、顔つきも派手になっていますから、写真を見ながらみんなで盛り上がってしまいました。

実は酒店、特に制服店では頻繁に警察による臨検があるため、女の子たちは皆、身分證を携帯しています。特に暑假は未成年の高中生がよく紛れ込んで働いているために、極めて高い頻度で臨検があります。しかし、自分の本名は基本的に客人に教えませんし、身分證を見せることなど決してありません。また、客人が要求しても絶対に見せてくれません。この時は彼女たちとは3人とも初対面でしたが、新人の子2人は經紀人の面接に同席していましたし、芊芊は休憩室で逢っていますから、彼女たちはどうやら私をスタッフの関係者と思っているような節がありました。さらに芊芊は私に「外国人はしつこくつきまとうことが少ないから大丈夫」というようなことを話しました。酒店に来る台湾人の客人はストーカーのような客人もけっこう多く、台湾人にはよほどのことがない限り、私下のことを教えることはありません。なぜなら、彼らはまぎれもなく台湾人なので、いろいろなことができるし、方法もよく知っているため、女の子にとっては危険も伴うからです。

包廂に入って15分ぐらい経った頃、行政がドアを開け、「秀舞!秀舞!」(ショーダンスのこと)と彼女たちに言いにきました。通常、制服店では1節10分経つと女の子が灯りを暗くし、レーザービームやストロボ(酒店や包廂によって異なります)のスイッチを入れ、KTVに秀舞用の曲を點します。だいたい80006といった感じの8から始まる5ケタの数字を入力するのですが、80001~80032ぐらいは各酒店とも映像がないダンスミュージックになっており、秀舞の曲も決まっています。包廂の外には大音響にしますから聞えるのですが、音がないとさっきのように行政が女の子を促しに必ずやってきます。当然、客は「不要秀舞」と言うこともできて、そのような時は促しに来た行政に「客人不要秀舞」 と大声で言えば、そのままの状態ですごすことができます。

私はこの秀舞をしないことが極めて多く、だいたいのなじみの子は包廂に入るなり、すぐに自ら秀舞後の姿にすぐになってしまいますからあんまり、必要がないということもありました。しかし、今日は事情がちがい、まったく訳がわからない新人の子が2人いますから、いつもとは勝手が違っていました。私も芊芊がどのように彼女たちをリードするのかも興味がありました。

芊芊がKTVの控器を手に取り、80006と入力しました。KTVの画面は真っ暗になり、右上に数字だけが移っています。2人の女の子に芊芊が「一起跳舞!」(一緒に踊るよ!)と声をかけ、そして穿いていた銀色の高跟鞋(ハイヒールのこと)を脱ぎ捨てました。そして、だだっぴろい包廂の中に秀舞の大音響が響き渡りました。

芊芊はすくっとソファの上に立ち上がるとダンスを始めました。2人の子たちも見よう見まねで踊り始めました。そして芊芊のなまめかしい手が自らの制服にかかりました。そして、あっという間に彼女は身軽になってしまいました。それを見て、新人の女の子はびっくりして顔を見合わせています。しかし、芊芊は何も言わず、目で合図を送っていました。彼女たちはもじもじしていましたが、意を決したように芊芊と同じ姿になり、踊っています。

私は秀舞をするのは多くはないので、この時はちょっと見とれているような感じだったと思います。芊芊は2人が同じ姿になったのを確認すると笑顔になり、今度はテーブルの上に乗って踊り始めました。そして大きな包廂だったこともあり、2人の子もあいたテーブルの上で踊り始めました。ちょうどダンスが佳境に入ったときでした。私も芊芊たちに服を引っ張られて、彼女たちと同じ恰好にあっという間にされてしまいました。3人がかりでしたし、特に2人の新しい子は初めての体験で、恍惚状態になって興奮していたこともあり、もう何がなんだかわからないような状態でした。

その時です。パツッと包廂のドアが開き、人が入ってきました。

 画像は私が本拠地にしている制服店の秀舞の様子です。秀というのは英語のSHOWの当て字で、1時間に1回基本的に必ず、1節10分間は秀舞をすることになっています。制服店には不回穿店と回穿店(少ない)がありますが、制服店ならば必ず、秀舞はあるはずです。跳舞(ダンス)はいつでも基本OKで、包廂によっては夜店のように踊りまくっている子たちもいますね。

 このブログは元々、台妹と良い心の交流をもちたいと思っている、あるBBSでご賛同いただいた方々に情報提供する目的で始めましたので、画像等も一定期間をすぎたらほとんどをプライベートモードにしております。プライベートモードは私が友達認証した方が入れますが、コメントなどをお書きいただいたり、メールなどを通じて交流などを深め、ご信頼した方を対象にさせていただいております。酒店と同じような形で一見の方はすぐに認証はできませんので、何度かやりとりをさせていただいてからになります。ご理解のほど、お願いいたします。 

 なお、ブログの記事に関係ある画像を貼っていきますが、絶対に撮影は禁止ですので、ご注意ください。これらの写真は酒店のスタッフや幹部が撮影し、私に提供してくれている特別なものばかりです。また、画像の無断使用や流用については絶対に禁止です。ご理解をよろしくお願いします。     

金璁跳舞

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