「有聽過酒銀行嗎?」 (ねえ、酒銀行って聴いたことある?)

美しい朝の海岸と朝靄に霞む龜山島を見ながら、PCで網路を調ていた芊芊が私に急に思いついたように尋ねました。

「没有、我知道普通的銀行」 (ううん、普通の銀行なら知ってるけど)

「酒銀行以科學化的溫控酒窖環境、儲藏這些年年增值的甕酒、並且運用了古酒熟成的原理。讓消費者能夠很輕鬆地享用香醇的古酒。在買酒賞味的同時、也能享受投資的。在台灣酒銀行有很多」

(酒銀行は科学変化が起きやすい温かい酒の穴蔵の環境と同じなんだよ。毎年預けたお酒の価値はだから値上がりしていくんだ。年々お酒が熟成されていくという原理を運用して、消費者は、とても簡単に良い香りがする古いお酒を楽しむことができるからね。お酒を買って銀行に預けるといい味がつくことが与えられると同時に、投資にもなっていて、それを享受することもできるんだ。台湾にはね、たくさん酒銀行があるんだよ)

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芊芊の顔がだんだんと生き生きと輝き出しました。元々、学生時代にリーダーでまとめ役だった彼女は何か教えたり、リーダーシップを発揮したりするときになると得意満面の表情になってきます。この時も何か、思いついたのでしょう。今日の予定もどうやら頭の中に計画が描かれたようでした。

お世話になった真情非凡行館で早餐をいただき、よくしていただいたご主人にお礼を言うと、私たちは再び芊芊の運転する機車で宜蘭市内へと向かい出しました。天気も快晴とあって早朝の海岸線はとても気持ちよく、衝浪(サーフィンのこと)をする若者たちを眺めながら、快適に芊芊はいつものようにとばしていきます。約1時間ほど走ったでしょうか。宜蘭の街中へ入ってきました。

「到了」 (到着したよ)

そこはちょっと古くさい感じがする建物が建ち並ぶ「宜蘭酒廠」という酒の醸造所でした。

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「時光回朔 200 年以前、由福建省安溪縣移民來臺的林氏家族、因非常懷念故鄉安溪用紅麴釀的「紅老酒」、故在宜蘭試釀紅老酒,竟得成功。由於陳貴娘女士所釀的紅老酒、色香俱美甘醇順喉、因此聲名遠播。她的兒子林青雲、盡得真傳、也有一身釀酒的好功夫。西元1909 年林青雲在年少18歲時、集資募股、夥同其他33人、 創立「蘭陽製酒公司」、開始生產「安溪紅老酒」。讓母親的真傳絕學、祖父的鄉愁之酒、得以綿延不絕、留下紅露飄香百年的醇美滋味、成為宜蘭歷史發展的一部份、也讓現今的宜蘭酒廠成為台灣唯一的百年酒廠宜蘭酒廠」

(時間を遡ること 200 年前に、福建省安渓県から台湾に移住してきた林氏一族がすごく故郷の安渓を偲んでね、赤い麹を使った「紅老酒」を懐かしがったんだ。創立者の林青雲氏のお母さんが、宜蘭で紅老酒を醸造するのを試みたところ、意外にも成功したんだよ。その紅酒は色も良く、芳醇な香りがする喉を潤すおいしい味だったんだ。そのため、その名声は遠くまで聞こえていったの。彼女の息子の林青雲氏は母親の秘伝を受け継いで、この良質のお酒を醸造する技量を身につけたんだ。1909 年に林青雲氏がまだ若い18歳の時、資金を集めて株の募集をして、33人の出資者を集めたんだ。そして「蘭陽制酒会社」を創立して、「安溪紅老酒」の生産を開始したんだよ。母親の秘伝の卓越した技術を学び、祖父の郷愁の酒の味を継承したの。百年の歴史がある純粋で美しい赤いお酒の味を表出することに成功したんだ。これは宜蘭の歴史の発展の一部分を担っていて、宜蘭酒廠は台湾の唯一の百年の歴史をもつ醸造所なんだ)

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宜蘭酒廠HP

芊芊の説明によるとこの宜蘭酒廠は台湾で最も古い歴史をもつ醸造所で、今では台湾では料理などに欠かせない、やはり歴史がある紅標米酒も台灣菸酒公司が醸造した代表的なお酒として知られています。また、紅老酒を造る紅麹は中国で古くから利用されていて、お酒以外の発酵食品にも使われており、そのひとつである紅豆腐などは台北市内でもよく専門店をみかけます。
台湾紅標米酒
天然紅豆腐(豬血湯)總店

 台湾では最も一般的な紅標米酒。料理にもよく使用されます。
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 紅豆腐の専売で有名なチェーン店、天然紅豆腐豬血湯。
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紅豆腐

その発酵の源が紅麹ですが、健康食品的な面が近年は日本でも注目を浴びています。
グンゼ健康食品センター 紅麹とは?

 紅麹米。発酵とともに鮮やかな紅色を呈色します。紅麹を利用した食品やサプリメントも多く発売されています。
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芊芊が私の手を引いて、どんどん宜蘭酒廠の中へ入っていきました。この台中娘はお酒がお目当てではなくて、ここで私に台湾のお酒の歴史や日本統治時代の建造物をきっと説明したくてうずうずしているのでしょう。醸造所内は広くて、いろいろな建物がありますが、まず、私を真っ先に連れていったのが、酒銀行でした。いろいろな展示や醸造所の見学にまずは行くものとばかり思っていた私にとっては意外な展開でした。

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酒銀行は入口すぐのところにあるのですが、芊芊が話していたようにお酒を買って、ここに保管をしてもらい、年数をかけて熟成してもらうという仕組みです。いろいろなお酒を購入してここに保管してもらうことができます。

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「你知道女兒紅嗎?」 (ねえ、女兒紅って知ってる?)

芊芊が突然、私に訊きました。

「嗯、不知道的」 (うん、わかんないなあ)

芊芊が説明をし始めました。

「女兒紅・狀元紅、古代相傳是女兒・兒子出生後、埋在地底下數甕自釀的女兒紅、經過16年成年、要當作女兒出嫁宴客使用要嫁娶時、拿來當作宴客使用」

(女兒紅と狀元紅は昔、女の子や男の子が生まれたときに地下に自分たちで醸造したお酒を瓶に入れて埋蔵して醸造をさせるためにねかせとくの。そして16年ぐらいたってからそれを取り出してね、女の子がお嫁に行くときの結婚披露宴で、来てくれたお客さんにふるまうんだよ)

酒銀行の中に入ると、確かに女兒紅・狀元紅と書かれた酒瓶がすごくたくさん置いてあって、中国のこの伝統が今でも生きていることが実感できました。

 ずらりと並んだ女兒紅。瓶には誰が何年何月何日に預けたかが書いてある紙の目張りがしてあります。
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 酒銀行の保管庫の中。入ることができます。女兒紅の中身はほとんどが紹興酒です。陳年というのは長い年月醸造されたという意味で「年代物」という意味の中国語です。紹興酒は「黄酒」の代表的なお酒で紅麹で醸成する「紅露酒」とは異なります。紹興酒は、主原料にもち米と麦麹、そして辣蓼草(からだて)、陳皮(みかんの皮)、肉桂、甘草などで作られた薬酒を用いており、、浙江省紹興市の名水と称される鑒湖の清水で仕込んだ黄酒です。特に3年以上熟成させた酒は「老酒」と呼ばれますが、女兒紅は16年以上ねかせて醸成しますから、代表的な「陳年老酒」と言えます。
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「我要女兒紅的。要嫁娶時、拿來當作宴客使用!」 

(ねえ、女兒紅が私も欲しい、お嫁に行くときに来てくれたお客さんたちにふるまうんだ!)

「可是不能等16年!」

(だって16年も待てないよ)

酒銀行のメニューには女兒紅があり、12Lのものは8000元となっています。保管料は毎年1000元となっていて、私は基本的に駐在ですから16年もこの保管料を払い続けることはできません。しかし、家庭的には決して恵まれず、特に台北に来てからは孤独の中で生きてきた彼女にとっては、何かしらの「つながり」を欲したのでしょう。思えば北港武德宮に行った時も彼女との証を紅色的紙條を鐘の中に貼って残しました。
紅色的紙條

「嗯、了承的。只是我還是比較好古早習俗裡所重視的心意、人生應該有些比錢更重要的東西」

(うん、わかったよ。ただ、僕は古い習慣を大切にする心はまだもってるし、人生には多分、お金よりも重要なものがあるよね)

私は女兒紅を購入して酒銀行に預けようと思いました。孤独に生き、親と今は絶縁状態にある彼女にとってちょっと思い過ごしかもしれませんが、彼女の父親替わりのことができたらとも思いました。しかし、服務員に早速、購入を申し出たところ、意外なことが起こりました。女兒紅はすごく人気があって、今、酒を置く場所が満杯でもう預かれないというのです。そこで服務員に訊いたところ、小さな金雞老紅酒5Lならば、置ける棚があると言いました。金雞老紅酒5Lの価格は4000元。保管料は1年目は無料、2年目と3年目は500元、4年目はもう置けないということでした。

3年ぐらいなら、ちょうどいいかもと正直思いました。

芊芊は3年後に23歳になるから、もしかしたら女兒紅の替わりになるかもと考えました。私は喜ぶ芊芊とともに老紅酒を購入し、保管料も同時に支払いをしました。酒銀行に彼女名義のお酒を預かる。その3年間の間に芊芊の人生がどう変わるのか、そして、3年後に彼女がこのお酒を飲むときにどんな思いでどんな気持ちで味わうのか・・・・。お酒が熟成するようにきっと3年の歳月は彼女の人生も熟成させ、芳醇な味になってることを願いながら手続きをしました。

 金雞老紅酒5Lと酒銀行の通帳
酒銀行

通帳の名義は芊芊。その酒銀行の通帳を彼女は愛おしそうにいつものトートバックの中に大切そうにしまいこみました。

「謝謝、真的謝謝」 (ありがとう、本当にありがとうね)

彼女が実際に3年後に取りに行ったかどうかはわかりません。

しかし、きっと彼女はあの宜蘭の地でいろいろな思いを馳せて酒銀行に預けたこの「紅老酒」を少なくとも忘れずにいてくれると私は願っています。

 酒銀行の中の様子。下段は金雞老紅酒27L、上段が金雞老紅酒5Lの棚
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 金雞老紅酒27Lの酒銀行用の甕
老紅酒

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