3度目のダンスが終わり、私たちは再びテーブル席に戻りました。
周りにはまだ多くの子たちが新たなパートナーに声をかけられるのを待っていました。その中でテーブル席に座っている子はいわゆる「勝ち組」という印象があるように感じました。それは彼女たちの表情がまったくちがうことからだと言えばいいでしょうか。
莉莉は聾唖でありながら、なぜダンス・ミュージックとあわせて踊る必要がある舞女をしているのだろうか、本当の仕事は何なんだろうか、年齢はいくつなんだろうかなど、いろいろな私下(プライベートなこと)も訊いてみたいという気もしました。でも、会ったばかりで具体的なことを彼女のことばかり訊くのは失礼だろうし、プライドが高い彼女のことだから、少し今日はそのようなことを訊くのはやめようと思いました。
一晩限りのこんなよくわからない刹那的な出会いもあってもいいのかもしれません。
まもなく彼女を指名した時間も1時間になろうとしていました。僕は莉莉に100元を渡そうと思い、テーブルの上に100元札を置きました。莉莉はその100元札を大事そうに手に取ると彼女のドレスの中(多分、下着にはさんだと思います)にしまい、深々と頭を下げました。
「莉莉、拜拜!」 (リリ、バイバイ!)
僕は彼女に別れを告げ、ちょっと大げさに手を振り、テーブル席を立ち去りました。本当はもっと多くのことを伝えたかったけど、耳が聞こえない彼女には単純明快なあいさつしかできないと思ったのです。 きっと莉莉はこの後もまた、踊ってくれる人を探して壁に黙って立つに違いありません。
僕は預けたバックを取りに入口附近にある簡単なクロークに向かいました。バックと引き換えにもらったナンバー入りのブレスレットを渡したのですが、舞女のバックもたくさんあり、ひっきりなしに少费をもらった子たちがバックの中にある財布にお札をしまうためにクローク係のおじさんにバックを取らせるため、まったく拉致があきません。
舞庁のクロークはカウンタータイプになっており、その後ろが開放的なロッカーになっていて、カウンター越しに自分のバックを見ることができます。つまり、奥まった見えないところにバックがあると内部従業員によって盗難の恐れがあるため、いつも自分の荷物を確認できるようになっているのです。従って、ブレスレットの番号を見て、クローク係のおじさんがバックを探すというよりは、自分でバックを指差して色や形を言い、取ってもらってブレスレットの番号とバックにつけてある札が同じ番号であることを確認してもらうと言った方が正しいでしょうか。
バックを預けるときに引き換えにもらうのは腕にするブレスレット型になっていて、これも僕が思うに番号札だとダンスの際にポケットに手を入れられて舞女の子に盗られる可能性があるし、舞女の子は小費をもらうたびにバックの財布にしまいにきますから、手首にしているブレスレットの番号を見せればよく、すぐにバックをロッカーに戻せるという極めて効率が良い安全性の高いシステムになっています。しかし、とにかくひっきりなしに舞女の子が来ますから、とにかく係のおじさんにアピールしないと自分のバックをなかなか取ってもらえないことになります。
僕がなかなかバックを取ってもらえないでいると、不意に後ろから頭をこづかれました。
「莉莉!」
舞庁の中でそんなことをするのは、莉莉しかいないのは明らかでした。だって、知り合いは彼女しかいないのですから。振り返ると当たり前のように彼女が口元を押さえて笑っています。
「你是来到钱包放入钱的吗?」 (お金を財布に入れに来たの?)
僕は手机の微信に書いて莉莉に見せました。そして、再び彼女と微信でのやりとりが始まりました。
「嗯嗯」 (うんうん)
「但是今天回家的」 (でも今日は家にもう帰るから)
「为什么?」 (どうして?)
「因为今天已经我的生意、很好了」 (だって、今日はもう稼ぎは十分だからね)
「你給我少费150元、天天我的平均是大概100元左右」
(あなたが150元くれたから、毎日私の平均は100元ぐらいなんだ)
莉莉はクローク係のおじさんに指をさして、自分のバックをとるように大きなジェスチャーをし始めました。
「不可以、我先说了」 (だめだよ、僕のほうが先に言っただろ)
クローク係のおじさんに言ったものの、彼は聞く耳をもたず、飄々と莉莉のバックを先に取り出しました。そして、莉莉は僕の顔を見て微笑むと手を振って、出口に向かって去っていきました。
僕はなかなかバックを取ってもらえなかったのですが、やっと取ってもらえて受け取ると出口へと向かいました。出口付近には帰る女の子や男性客のグループ、即席のカップルなどが狭い踊り場になっているような所にいっぱい溜まっていて、ちょっとした混雑でした。ゴチャゴチャした人並みをかき分けて、外に出る階段のところまで来たとき、踊り場の端の所にあるテーブルに座っている女の子が目に入りました。
「莉莉!」
ドレスから普段着に着替えた莉莉でした。思わず声をかけたのですが、まったく気が付きません。それもそのはず、彼女は聴力を失っていることを僕は思い出しました。僕はそーっと彼女のところに近づき、彼女の頭をさっきの仕返しとばかりにこづきました。
莉莉がもっとびっくりするかなと思ったのですが、意外にも彼女は予期していたような顔をしました。そして彼女はすぐに立ち上がると微笑みながら僕の前に立ち上がり、手机の画面を見せました。
「我等待你,」 (私はあなたを持っていたんだよ)
「因为如果我回家、我只一个人以外不在」 (だって家にもし帰っても私ひとりぼっちだから)
「所以今天一起在比较好」 (だから今日は一緒にいようよ)
とりたてて急いで帰ることもないか。僕も一人よりは二人の方が楽しい夜になることにまちがいはないし。
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周りにはまだ多くの子たちが新たなパートナーに声をかけられるのを待っていました。その中でテーブル席に座っている子はいわゆる「勝ち組」という印象があるように感じました。それは彼女たちの表情がまったくちがうことからだと言えばいいでしょうか。
莉莉は聾唖でありながら、なぜダンス・ミュージックとあわせて踊る必要がある舞女をしているのだろうか、本当の仕事は何なんだろうか、年齢はいくつなんだろうかなど、いろいろな私下(プライベートなこと)も訊いてみたいという気もしました。でも、会ったばかりで具体的なことを彼女のことばかり訊くのは失礼だろうし、プライドが高い彼女のことだから、少し今日はそのようなことを訊くのはやめようと思いました。
一晩限りのこんなよくわからない刹那的な出会いもあってもいいのかもしれません。
まもなく彼女を指名した時間も1時間になろうとしていました。僕は莉莉に100元を渡そうと思い、テーブルの上に100元札を置きました。莉莉はその100元札を大事そうに手に取ると彼女のドレスの中(多分、下着にはさんだと思います)にしまい、深々と頭を下げました。
「莉莉、拜拜!」 (リリ、バイバイ!)
僕は彼女に別れを告げ、ちょっと大げさに手を振り、テーブル席を立ち去りました。本当はもっと多くのことを伝えたかったけど、耳が聞こえない彼女には単純明快なあいさつしかできないと思ったのです。 きっと莉莉はこの後もまた、踊ってくれる人を探して壁に黙って立つに違いありません。
僕は預けたバックを取りに入口附近にある簡単なクロークに向かいました。バックと引き換えにもらったナンバー入りのブレスレットを渡したのですが、舞女のバックもたくさんあり、ひっきりなしに少费をもらった子たちがバックの中にある財布にお札をしまうためにクローク係のおじさんにバックを取らせるため、まったく拉致があきません。
舞庁のクロークはカウンタータイプになっており、その後ろが開放的なロッカーになっていて、カウンター越しに自分のバックを見ることができます。つまり、奥まった見えないところにバックがあると内部従業員によって盗難の恐れがあるため、いつも自分の荷物を確認できるようになっているのです。従って、ブレスレットの番号を見て、クローク係のおじさんがバックを探すというよりは、自分でバックを指差して色や形を言い、取ってもらってブレスレットの番号とバックにつけてある札が同じ番号であることを確認してもらうと言った方が正しいでしょうか。
バックを預けるときに引き換えにもらうのは腕にするブレスレット型になっていて、これも僕が思うに番号札だとダンスの際にポケットに手を入れられて舞女の子に盗られる可能性があるし、舞女の子は小費をもらうたびにバックの財布にしまいにきますから、手首にしているブレスレットの番号を見せればよく、すぐにバックをロッカーに戻せるという極めて効率が良い安全性の高いシステムになっています。しかし、とにかくひっきりなしに舞女の子が来ますから、とにかく係のおじさんにアピールしないと自分のバックをなかなか取ってもらえないことになります。
僕がなかなかバックを取ってもらえないでいると、不意に後ろから頭をこづかれました。
「莉莉!」
舞庁の中でそんなことをするのは、莉莉しかいないのは明らかでした。だって、知り合いは彼女しかいないのですから。振り返ると当たり前のように彼女が口元を押さえて笑っています。
「你是来到钱包放入钱的吗?」 (お金を財布に入れに来たの?)
僕は手机の微信に書いて莉莉に見せました。そして、再び彼女と微信でのやりとりが始まりました。
「嗯嗯」 (うんうん)
「但是今天回家的」 (でも今日は家にもう帰るから)
「为什么?」 (どうして?)
「因为今天已经我的生意、很好了」 (だって、今日はもう稼ぎは十分だからね)
「你給我少费150元、天天我的平均是大概100元左右」
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莉莉はクローク係のおじさんに指をさして、自分のバックをとるように大きなジェスチャーをし始めました。
「不可以、我先说了」 (だめだよ、僕のほうが先に言っただろ)
クローク係のおじさんに言ったものの、彼は聞く耳をもたず、飄々と莉莉のバックを先に取り出しました。そして、莉莉は僕の顔を見て微笑むと手を振って、出口に向かって去っていきました。
僕はなかなかバックを取ってもらえなかったのですが、やっと取ってもらえて受け取ると出口へと向かいました。出口付近には帰る女の子や男性客のグループ、即席のカップルなどが狭い踊り場になっているような所にいっぱい溜まっていて、ちょっとした混雑でした。ゴチャゴチャした人並みをかき分けて、外に出る階段のところまで来たとき、踊り場の端の所にあるテーブルに座っている女の子が目に入りました。
「莉莉!」
ドレスから普段着に着替えた莉莉でした。思わず声をかけたのですが、まったく気が付きません。それもそのはず、彼女は聴力を失っていることを僕は思い出しました。僕はそーっと彼女のところに近づき、彼女の頭をさっきの仕返しとばかりにこづきました。
莉莉がもっとびっくりするかなと思ったのですが、意外にも彼女は予期していたような顔をしました。そして彼女はすぐに立ち上がると微笑みながら僕の前に立ち上がり、手机の画面を見せました。
「我等待你,」 (私はあなたを持っていたんだよ)
「因为如果我回家、我只一个人以外不在」 (だって家にもし帰っても私ひとりぼっちだから)
「所以今天一起在比较好」 (だから今日は一緒にいようよ)
とりたてて急いで帰ることもないか。僕も一人よりは二人の方が楽しい夜になることにまちがいはないし。
When I think of you some time
And I want to spend some time with you
Just the two of us
Just the two of us
You and I
僕は君のことを考えることがあって、君と一緒に時を過ごしたいと思うことがある。
だって、僕たちは二人っきりだし。そう、君と僕。
「嗯、好的」 (うん、そうしようか)
彼女の差し上げた柔らかな手をとり、僕ら二人は夜の上海の街へ歩み出しました。
僕は君のことを考えることがあって、君と一緒に時を過ごしたいと思うことがある。
だって、僕たちは二人っきりだし。そう、君と僕。
「嗯、好的」 (うん、そうしようか)
彼女の差し上げた柔らかな手をとり、僕ら二人は夜の上海の街へ歩み出しました。
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