さて、お腹も減ったことだし、太平山荘に別れを告げて、鳩之澤溫泉區へ行くとばかり思っていました。しかし、芊芊の機車に乗ると、行き来た太平林道とは逆の方向に走り出しました。
どうもおかしい。
相変わらず、芊芊は行き先を言いません。しかし、どんどん山の奥の方へ機車を走らせていきます。しばらくすると派出所のような建物に到着。芊芊も機車を停めて、私に一緒に来るように言いました。
やっとわかりました。芊芊は太平山からさらに奥へ入った翠峰湖を目指していました。太平山からは16kmほどなので、機車ならあっとという間なのですが、ここに至る翠峰景觀道路を走り抜けるためにここで入山証を出して許可を得る必要がありました。
「進入翠峰湖前、要在翠峰景觀道路入口處的檢查哨辦理入山登記」
(翠峰湖に行く前には、必ず翠峰景觀道路の入口にある検査所で入山の届を出さなきゃいけないんだよ)
芊芊の説明でやっとわかりましたが、本来は事前に入山届けを出し、許可を得ておかねばならないようです。しかし、1日の許可数に達しない場合は、ここで登記をすれば許可が出るとのことでした。芊芊は事前にそのことを知っていましたが、入山数に達しないことが多いということを知っており、ここで直接登記すれば、大丈夫と予想していました。
台湾は自然保護政策にかなりの力を入れており、玉山や雪山などの有名な山への登山なども1日あたりの入山者数を決めていて、事前に申請をしなけらばならず、さらに抽選などもあります。この翠峰湖は台湾で最も標高が高い所(1840m)にある天然の湖で、まわりの山々に降った雨が流水となってできたものです。そのため、台湾当局は、その保護にも力を入れています。
予想通り、私たちは身分証と居留証を見せ、書類を記入したところ、あっさりと許可が出ました。ここからは翠峰景觀道路を走り抜けていくことになります。まず、私たちは東口の翠峰山莊に行くことにしました。ここで計画を練るというのが芊芊の考えでした。
翠峰湖の導覧図。クリックすると拡大します。
「這條翠峰景觀道路以前就是大元山林場聯絡太平山林場的五分車軌道路線、林場關閉後改建成一般道路」
(この翠峰景觀道路は以前は大元山林場と太平山林場を結ぶ作業列車の軌道だったんだけど、林場が閉鎖されてから一般道路に作り替えられたんだよ)
山の斜面をえぐるように作られた狭い道路を走りながら、芊芊は大声で私に教えてくれました。距離は短いこともあってあっという間に翠峰山莊に到着しました。山小屋風の雰囲気のある山莊で、ここでちょっと資料を手に入れて、計画を再考することにしていました。結局、私たちは機車で東口に戻って機車を置いて、觀湖平台へ向かうことにしました。
雰囲気のある翠峰山莊。クリックすると拡大します。
霧がかかって、湖が見えないことが多いらしいのですが、この日は幸い好天に恵まれていましたこともあり、天気がいいうちにまずは湖を見ることをまずは優先しようということになったのです。そして、翠峰湖環山步道をゆっくり歩くことにしました。だいたい2時間ほどかかりますが、少しばかり翠峰山莊で小吃を食べたこともあり、今日は朝早くからの行動でしたから、戻ってきても午後2時過ぎなので、問題はありません。それと酒店小姐なのに、この台中娘は健脚なことも私は以前行った杉林溪森林遊樂區のハイキングでよく知っていました。心配なのは私の方ですが、この落ち着きがないおしゃべり娘は飽きないように解説しながら、元気に歩きますから、きっと大丈夫でしょう。
クリックすると拡大します。標高図と詳しい木橋の入った地図です。
一般的には東口をスタートして苔蘚區へ入り、十號橋から白木林、紅檜區を通り、一號橋まで順に木橋を通過して西口へ出て東口へ戻るという歩き方が多いようです。
翠峰湖環山步道東口入口。翠峰湖環山步道を歩くと東口から西口まで2~3時間ぐらい。
東口からは、このような木道が続く。
東側の觀湖平台からの翠峰湖
芊芊の解説が歩きながらいつものように続きます。
「翠峰湖是全省最大的高山湖泊、海拔1840公尺、為一高山湖泊。位於太平山與大元山之間、其生態體系有別於一般湖泊。水源為附近山區雨水匯集而成、滿水期9~11月時、枯水期1~4月」
(翠峰湖は台湾の最大の高山湖でね、海抜1840mもの所にある唯一の高山湖なんだ。太平大と大元山の間に位置していて、その生態系は他の一般的な湖とは大きくちがうの。水源は周りの山の降った雨水が流れ込んで集まったもの。満水期は9月から11月にかけて、枯水期は1月から4月にかけてなんだよ)
私たちが訪れた頃はちょうど、枯水期から満水期に向かう季節で湖は美しい水を湛え始めていました。太陽の光が反射し、山間の窪地に位置するような翠峰湖は湖畔に降りることはできませんが、いくつも作られている觀湖平台から見るだけでも、その吸い込まれるような美しさに見入ってしまいます。
苔蘚區の木道。環山步道の東側の奥のあたり。多雨の環境もあって苔が見事です。
苔蘚區は鬱蒼とした檜の樹林と緑のカーペットのような苔が美しく広がっています。
さらに進むと見事な白木區と紅檜區に入ります。太平山の原始林公園は植林された檜の樹林でしたが、こちらは自然がそのまま残っている感じで、枯れた白い檜が並び、さらには老木や中空の大木も多く、日本でいうと屋久島の原生林のような雰囲気があり、オゾンをたっぷり感じることができます。
翠峰湖環山步道の中間地点あたりにある中空的檜木。枯れた大きな大木で中は空洞になっています。
檜材で作られた歩道。気持ちの良い樹林の中を進んで行きます。
第十號橋は東側ですが、西側にはこの第九號橋を起点に次々と木橋が連続してあります。
西口側の第五號橋。このような木橋が西口側には10個あります。
西口側の觀景平台から湖を見ると少し、霧が翠峰湖にかかり出しました。
「好夢幻的感覺喔。雲霧又匯集整個湖面又看不到了。原本以為都是雲霧的翠峰湖、在不一會兒、又突然雲霧散去了」
(とっても幻想的だあ。霧が集まってきたから、湖の表面がまた、見えなくなってきたね。もともとすべてが霧の中にある翠峰湖と言われているし、迷子の子供のように突然、霧もなくなって晴れちゃうんだよね)
西側のいくつかある觀景平台から見る雲海も見事で、本当に殿上人になったような気持ちになりました。遠くに雪山と思われる山脈も見え、ついついその幻想的で美しい風景に私と芊芊は見入ってしまいました。
しばらく木橋を順に渡りながら歩いていくとちょっとした建物があって晴峰線山地運材軌道のことや生態系の説明がなされている解説站がありました。ここにも太平山に続く運材軌道があり、日本統治時代に切り開かれた日本人の足跡が残っていました。
「這個建築物是從前蹦蹦車油庫」
(この建物は、昔はトロッコの燃料倉庫だったんだ)
芊芊が話すように、この小さな解説站には、すごく堅牢に作られていたことが記されていました。
かつての晴峰線山地運材軌道が、やはりまだ残されていて、そこが歩道になっています。
しばらくすると最後の平台があって「出口」の表示があり、木道の階段を下りると西口に到着しました。
翠峰湖環山步道西口
「翠峰湖環山步道猶如魔戒裡的精靈國所處的美麗森林。 欣賞翠峰湖的湖光水色、加上步道沿途景致層層疊疊、真的綠色仙境・・・・」
(翠峰湖の環山步道は例えていうなら魔界の精霊国にある美しい森林のようだね。 翠峰湖の湖面が水色に光輝くのを見入りながら、どんどん歩いていくと途中の景色がどんどん重なり合ってくるみたい。本当に緑色の仙境だよね・・・・)
素晴らしい自然の造形を見ると、私たちはその心も清新になっていくのを実感します。芊芊と一緒じゃなかったら、きっとこんなところまでなかなか足を運べなかっただろうな。台湾には多くの魅力があって、決して大きな国ではないけど、心を打つ素晴らしい風景がまだまだ眠っていることに気づいたひとときでした。
芊芊が最後にポツリと独り言をつぶやきました。
「這20歲、應該是在形容翠峰湖如20歲少女心般的千變萬化吧」
(私は20歳。この翠峰湖は例えれば20歳の少女の心のようにいつもその姿が移り変わるよね)
彼女が何を考え、どう心が移り変わっていたのか、この翠峰湖の霧のようだったのかもしれません。
そして、その言葉が近い将来、現実のものになるとは、この時の私にはまったく、わかりませんでした。
時間はもう、午後。これから一気に下山。
私は再び芊芊の操る機車に乗り、心地よい宜蘭の風を感じて、走り出しました。
今回の記事はいかがでしたか?
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どうもおかしい。
相変わらず、芊芊は行き先を言いません。しかし、どんどん山の奥の方へ機車を走らせていきます。しばらくすると派出所のような建物に到着。芊芊も機車を停めて、私に一緒に来るように言いました。
やっとわかりました。芊芊は太平山からさらに奥へ入った翠峰湖を目指していました。太平山からは16kmほどなので、機車ならあっとという間なのですが、ここに至る翠峰景觀道路を走り抜けるためにここで入山証を出して許可を得る必要がありました。
「進入翠峰湖前、要在翠峰景觀道路入口處的檢查哨辦理入山登記」
(翠峰湖に行く前には、必ず翠峰景觀道路の入口にある検査所で入山の届を出さなきゃいけないんだよ)
芊芊の説明でやっとわかりましたが、本来は事前に入山届けを出し、許可を得ておかねばならないようです。しかし、1日の許可数に達しない場合は、ここで登記をすれば許可が出るとのことでした。芊芊は事前にそのことを知っていましたが、入山数に達しないことが多いということを知っており、ここで直接登記すれば、大丈夫と予想していました。
台湾は自然保護政策にかなりの力を入れており、玉山や雪山などの有名な山への登山なども1日あたりの入山者数を決めていて、事前に申請をしなけらばならず、さらに抽選などもあります。この翠峰湖は台湾で最も標高が高い所(1840m)にある天然の湖で、まわりの山々に降った雨が流水となってできたものです。そのため、台湾当局は、その保護にも力を入れています。
予想通り、私たちは身分証と居留証を見せ、書類を記入したところ、あっさりと許可が出ました。ここからは翠峰景觀道路を走り抜けていくことになります。まず、私たちは東口の翠峰山莊に行くことにしました。ここで計画を練るというのが芊芊の考えでした。
翠峰湖の導覧図。クリックすると拡大します。
「這條翠峰景觀道路以前就是大元山林場聯絡太平山林場的五分車軌道路線、林場關閉後改建成一般道路」
(この翠峰景觀道路は以前は大元山林場と太平山林場を結ぶ作業列車の軌道だったんだけど、林場が閉鎖されてから一般道路に作り替えられたんだよ)
山の斜面をえぐるように作られた狭い道路を走りながら、芊芊は大声で私に教えてくれました。距離は短いこともあってあっという間に翠峰山莊に到着しました。山小屋風の雰囲気のある山莊で、ここでちょっと資料を手に入れて、計画を再考することにしていました。結局、私たちは機車で東口に戻って機車を置いて、觀湖平台へ向かうことにしました。
雰囲気のある翠峰山莊。クリックすると拡大します。
霧がかかって、湖が見えないことが多いらしいのですが、この日は幸い好天に恵まれていましたこともあり、天気がいいうちにまずは湖を見ることをまずは優先しようということになったのです。そして、翠峰湖環山步道をゆっくり歩くことにしました。だいたい2時間ほどかかりますが、少しばかり翠峰山莊で小吃を食べたこともあり、今日は朝早くからの行動でしたから、戻ってきても午後2時過ぎなので、問題はありません。それと酒店小姐なのに、この台中娘は健脚なことも私は以前行った杉林溪森林遊樂區のハイキングでよく知っていました。心配なのは私の方ですが、この落ち着きがないおしゃべり娘は飽きないように解説しながら、元気に歩きますから、きっと大丈夫でしょう。
クリックすると拡大します。標高図と詳しい木橋の入った地図です。
一般的には東口をスタートして苔蘚區へ入り、十號橋から白木林、紅檜區を通り、一號橋まで順に木橋を通過して西口へ出て東口へ戻るという歩き方が多いようです。
翠峰湖環山步道東口入口。翠峰湖環山步道を歩くと東口から西口まで2~3時間ぐらい。
東口からは、このような木道が続く。
東側の觀湖平台からの翠峰湖
芊芊の解説が歩きながらいつものように続きます。
「翠峰湖是全省最大的高山湖泊、海拔1840公尺、為一高山湖泊。位於太平山與大元山之間、其生態體系有別於一般湖泊。水源為附近山區雨水匯集而成、滿水期9~11月時、枯水期1~4月」
(翠峰湖は台湾の最大の高山湖でね、海抜1840mもの所にある唯一の高山湖なんだ。太平大と大元山の間に位置していて、その生態系は他の一般的な湖とは大きくちがうの。水源は周りの山の降った雨水が流れ込んで集まったもの。満水期は9月から11月にかけて、枯水期は1月から4月にかけてなんだよ)
私たちが訪れた頃はちょうど、枯水期から満水期に向かう季節で湖は美しい水を湛え始めていました。太陽の光が反射し、山間の窪地に位置するような翠峰湖は湖畔に降りることはできませんが、いくつも作られている觀湖平台から見るだけでも、その吸い込まれるような美しさに見入ってしまいます。
苔蘚區の木道。環山步道の東側の奥のあたり。多雨の環境もあって苔が見事です。
苔蘚區は鬱蒼とした檜の樹林と緑のカーペットのような苔が美しく広がっています。
さらに進むと見事な白木區と紅檜區に入ります。太平山の原始林公園は植林された檜の樹林でしたが、こちらは自然がそのまま残っている感じで、枯れた白い檜が並び、さらには老木や中空の大木も多く、日本でいうと屋久島の原生林のような雰囲気があり、オゾンをたっぷり感じることができます。
翠峰湖環山步道の中間地点あたりにある中空的檜木。枯れた大きな大木で中は空洞になっています。
檜材で作られた歩道。気持ちの良い樹林の中を進んで行きます。
第十號橋は東側ですが、西側にはこの第九號橋を起点に次々と木橋が連続してあります。
西口側の第五號橋。このような木橋が西口側には10個あります。
西口側の觀景平台から湖を見ると少し、霧が翠峰湖にかかり出しました。
「好夢幻的感覺喔。雲霧又匯集整個湖面又看不到了。原本以為都是雲霧的翠峰湖、在不一會兒、又突然雲霧散去了」
(とっても幻想的だあ。霧が集まってきたから、湖の表面がまた、見えなくなってきたね。もともとすべてが霧の中にある翠峰湖と言われているし、迷子の子供のように突然、霧もなくなって晴れちゃうんだよね)
西側のいくつかある觀景平台から見る雲海も見事で、本当に殿上人になったような気持ちになりました。遠くに雪山と思われる山脈も見え、ついついその幻想的で美しい風景に私と芊芊は見入ってしまいました。
しばらく木橋を順に渡りながら歩いていくとちょっとした建物があって晴峰線山地運材軌道のことや生態系の説明がなされている解説站がありました。ここにも太平山に続く運材軌道があり、日本統治時代に切り開かれた日本人の足跡が残っていました。
「這個建築物是從前蹦蹦車油庫」
(この建物は、昔はトロッコの燃料倉庫だったんだ)
芊芊が話すように、この小さな解説站には、すごく堅牢に作られていたことが記されていました。
かつての晴峰線山地運材軌道が、やはりまだ残されていて、そこが歩道になっています。
しばらくすると最後の平台があって「出口」の表示があり、木道の階段を下りると西口に到着しました。
翠峰湖環山步道西口
「翠峰湖環山步道猶如魔戒裡的精靈國所處的美麗森林。 欣賞翠峰湖的湖光水色、加上步道沿途景致層層疊疊、真的綠色仙境・・・・」
(翠峰湖の環山步道は例えていうなら魔界の精霊国にある美しい森林のようだね。 翠峰湖の湖面が水色に光輝くのを見入りながら、どんどん歩いていくと途中の景色がどんどん重なり合ってくるみたい。本当に緑色の仙境だよね・・・・)
素晴らしい自然の造形を見ると、私たちはその心も清新になっていくのを実感します。芊芊と一緒じゃなかったら、きっとこんなところまでなかなか足を運べなかっただろうな。台湾には多くの魅力があって、決して大きな国ではないけど、心を打つ素晴らしい風景がまだまだ眠っていることに気づいたひとときでした。
芊芊が最後にポツリと独り言をつぶやきました。
「這20歲、應該是在形容翠峰湖如20歲少女心般的千變萬化吧」
(私は20歳。この翠峰湖は例えれば20歳の少女の心のようにいつもその姿が移り変わるよね)
彼女が何を考え、どう心が移り変わっていたのか、この翠峰湖の霧のようだったのかもしれません。
そして、その言葉が近い将来、現実のものになるとは、この時の私にはまったく、わかりませんでした。
時間はもう、午後。これから一気に下山。
私は再び芊芊の操る機車に乗り、心地よい宜蘭の風を感じて、走り出しました。
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