北港と言えば朝天宮です。

媽祖廟の総本山と言われ、 特に媽祖生誕祭(農歴3月23日)は天后節と呼ばれ、台湾全土から多くの道教の信者が媽祖像をもって訪れます。台湾中の媽祖はこの北港の本神の分身と言われており、1年に1回各地に祀られている 媽祖の分身を持ち寄って、この北港の本神とあわせて霊力を高めるという目的があり、各地で「新香団」という参拝の集団をつくって信者が台湾全土から集まってきます。 

媽祖は実在の人物で宋の時代の官吏の七女として生まれた黙娘という名が本名の少女神と言われています。生まれつき霊力が高く、数々の疫病や海難事故から人々を助け、そのため、現在は「航海の神」として多くの船舶に彼女の像が飾られています。もともと悪神であった順風耳と千里眼を改心させて随神として従えて、海を飛び越えて渡り歩き、多くの人々を救ったとされますが28歳の若さで没し、峨眉山で仙人となり、その後、海の神として崇められるようになったとの言い伝えがあります。

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媽祖生誕祭は派手な祭礼として全国に知られています。動画をご覧いただくとわかりますが、いつもながらの台妹の跳舞とあまりにもすごい爆竹。本当に恐れいります。鹿港も元宵節は大がかりで街中が盛り上がりますが、こちらの北港もおおにぎわいになります。 

 北港の媽祖生誕祭。大量の爆竹が鳴らされ、で朝天宮前の参道・中山路は人で埋まります。 
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 大量の爆竹の中、 媽祖像をもって参道を朝天宮に向かっていくおそろいの服装を着込んだ各地の新香団。中頃は神様も大好きな美女軍団による跳舞と鋼管秀。みんな超美人で痩身、胸が大きいという抜群の模特兒を集めていて、大フィーバー。本当に台湾のカオス、ここにありという感じです。命知らずの男たちが大量に登場、すごい爆竹と煙、炎の中を行進。危険すぎます。祭礼の動画なのにYOU TUBEではアダルトコンテンツ扱い。これが本当のドメスティック台湾。必見です。


 北港の元宵節。台湾全土からやはり大勢の人が集まります。 
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 こちらは北港の2011年元宵晚會で朝天宮前で酒店の跳舞ソングの定番・嗶嗶嗶を唱って踊る謝金燕。何が何やらよくわかりません。年輕台妹の跳舞は霊力が高かった若い女性神・媽祖様も大好きといったところでしょうか。 


早起きの芊芊は朝6時半にはすでに起床。メイクもばっちりきめて、今日も元気満々。汽車旅館なので早餐はないため、朝7時過ぎには朝天宮前の参道にある早餐店で朝食という素晴らしく健康的な一日が始まりました。朝天宮へ続く参道は両側に統一された看板がずらりと並ぶ商圏になっていて、この朝天宮がこの北港の象徴であり、中心であることがすぐに理解できます。とにかく宮の建物も巨大で複雑。今まで私が見た宮の中では群を抜いて立派で「聖地」と呼ばれるだけのことはありました。なかなか、実際にこの北港の朝天宮を正面から見る参道に立つとちょっとした感動があります。ただ、私たちが行った2008年の夏は修復大工事中で本来の美しい朝天宮の姿を見ることができなかったのが残念でした。

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 修復され、きれいに彩色された現在の朝天宮。
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「芊芊、請教我拜拜的方式」 (チェンチェン、お参りの仕方を教えて欲しいのだけど)

芊芊とは本当に多くの宮廟を巡りましたが、行天宮で基本を教えてもらったものの、この朝天宮はあまりにも巨大で広く、ちょっと不安になりました。

「進入廟門、陣陣的香火瀰漫著整個朝天宮,手點10柱香,順著指標一一參拜著每一殿不同的主神」

(門をくぐったらね、もう香や蝋燭の煙が漂っているのがわかると思うけど、まずが10本の柱香を持って、拜拜する順番の指標に従って進んでいけばいいいんだよ。それぞれの廟の神様はちがうからね)

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朝から結構人がいましたが、芊芊が言うにはすごく空いているとのこと。早朝に来て正解だったかもしれません。私と芊芊は10本の柱香をもって参拝を始めました。 媽祖には2人の仕える将軍がいてこの順風耳(千里先の声まですべて聞くことができる)と千里眼(いろいろなものを千里先まで見ることができる) の像があります。この順風耳と千里眼は祭礼には必ず登場しますが、朝天宮の前には神様グッズのお店が多くて、媽祖を中心にして並ぶこの3人の神様の像やキャラクターグッズがすごく多いです。

 朝天宮三川正殿にいる本当は緑の顔が千里眼、赤い顔が順風耳です。なぜか、タスキが逆?
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台湾の祭礼に登場する神様や偶像一覧(これを見ればよくわかります)

さらに進むと大きな鐘があって、その中には紅色の紙がたくさん貼られています。

「芊芊、那個是什麼?」 (チェンチェン、あれは何?)

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「鐘內貼滿了一張張紅色的紙條、若是覺得運氣一直不順、可以將自身所遭遇到的壞運寫在紙條後貼上去、就可以去除惡運喔!」

(鐘の中に赤い紙がいっぱい貼られているのはね、もし、ずっと運が悪いならば、赤い紙に運が良くなるように書いて張りに行くの。悪運がなくなるからね!) 

「我不要的。我有幸運、因為我遇到芊芊、哈哈哈・・・・・・」

(じゃ僕は必要ないな。芊芊と出逢ったという幸運があったからね。ハハハ)

芊芊は「你騙子的」(あなたは嘘つきね)と言って照れくさそうに笑いました。

芊芊がこの雲林も朝天宮に来たかった本当の理由は実は別にありました。人工流産の手術をして一週間、芊芊はとても体調が良く、萬華の青草巷や迪化街の中薬店を私と訪れたことは以前のブログで書きましたが、実はもうひとつの不安がありました。今は体調が良くても将来、もう一度ちゃんと懐妊して子供を産むことができるかどうかという心配があったのです。この朝天宮には台湾でも珍しい藥籤(どの漢方薬がいいかをうらなうおみくじ)がが未だに残っていて、それをやりたかったようなのです。

「藥籤是神明治病的處方箋。早期台灣人在醫療無效的情況下、都會去廟裡向神佛求處方、這種處方有兩種、一種是藥籤處方・另一為青草處方」

(藥籤はね神様の病気を直すための処方箋なんだよ。昔の台湾は医療行為を受けることができないような状況があって、みんな廟に行って神様や仏様に処方をお願いしてたんだ。2種類あってね、薬の処方と青草の処方があるのよ)

 民國14年(今から87年前)の台北保安宮の藥籤。医療の発達と浸透とともに姿を消していきました。 
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擲筊については以前、行天宮で紹介しましたが、あの時、芊芊はあっという間に聖筊を出していました。今日もこの強運娘はすぐに聖筊を出せるのでしょうか?

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「最初先點燃三柱香。 在媽祖面前三拜黙告、説名字、家裡地址、生年。懇求媽祖幫信女細察指點。片刻後到正殿向媽祖再明説一次、是否細察詳細。若有允聖籤、若無再稍候、請到選筒處取竹籤放在供卓。取「籤杯」連續三次聖籤、即是所求籤詩 。否則須再放回另抽竹籤、再求媽祖三聖籤」        

(最初のまず三本の柱香を燃やしてね、媽祖様の前で名前や住所、生年月日などを行って三拜をするのよ。 そして媽祖様に信者を細かく指導して助けてもらうようにお願いをするんだ。30分ぐらいしたらまた、正殿の媽祖の所に戻って、もう一度媽祖様に細かく指導してもらえるかどうかをもう一度訪ねるために擲筊をするんだ。もし聖籤が出れば筒から竹籤(取るべき籤詩の番号が書いてある竹ヒゴ) を取って供卓の上に置くし、だめだったら、しばらく時間をおいてからもう一度擲筊をすることになるよ。そして、また籤杯をとって擲筊をして連続で3回の聖籤が出たらね、やっと藥籤の籤詩(どの漢方が良いか書いてある紙)をもらうことができるの。もしだめだったら猛もう一度竹籤を引き直して、また三聖筊がでるように媽祖様にお願いするんだ)            

聖筊は三日月型の籤杯が表裏になること。確率は数学的には1/2です。最初の竹籤を取るための擲筊は3回投げて1回聖筊が出れば良いので、よほど運が悪くなければ出るのですが、問題は竹籤をひいてから籤詩をもらうまでの2回目の擲筊です。3回連続で聖筊を出さねばいけないので、確率的には1/8。これは簡単ではありません。つまり、一度でも表表の没筊や裏裏の笑筊が出るとやり直しですから、いくら、この強運娘でも簡単ではないと思いました。

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芊芊とまず、順路に従って、10本の柱香をもって順番に拜拜。正殿では擲筊に備えて、最初の媽祖様へのお願いをしていました。全部の各殿への拜拜が終るとだいたい30分ぐらいなので、再び正殿に戻ってまずは1回目の擲筊をします。これはあっという間に聖筊が出て、芊芊は筒から竹筊をひいてきました。しかし、ここからが大変、なかなか3回連続で聖筊が出ません。没筊や笑筊が出るとまた、竹筊をひき直しに行きますから、大変です。しかし、芊芊の表情は真剣そのもの。なかなか聖筊が出ないのも媽祖様が慎重に筊詩を選んでいるからとの芊芊の考え方があって、とにかく一心不乱に何度も擲筊を繰り返します。

だいたい30分ぐらいはやったでしょうか。やっと3回連続して聖筊が出ました。芊芊はうれしそうに竹筊に書いてある番号の筊詩を「大人科」の棚のの中から取ってきました。中身は中藥の配合が書かれていて、私はよくわからなかったのですが、芊芊は大切そうにバックの中に入れてしまっていました。これだけ苦労してご神託を受けたわけだから、確かに効能はあるかもしれません。しかし、きっと大切なのは自分の体のことを考える思いと健康を維持していこうという心掛けなのでしょう。一生懸命、体のことを考え、大切にしなさいという媽祖様のお告げのように私は感じました。芊芊はすごくうれしそうで、これで大丈夫と言わんばかりの表情をしていました。

さて、早朝の朝天宮は比較的空いていましたが、8時過ぎになると急に人が増えてきました。私たちは最後にこの朝天宮で配られている手作りのお守りをもらうことにしましたが、ここでも擲筊をして聖筊を出さねばいけません。私たちは2人も一発で聖筊。芊芊と思わず、顔を見合わせてしまいました。 

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さて、朝天宮を出た私たちは商圏になっている参道を散策しました。鹿港や王功とは、また異なった雰囲気でさらに台湾カラーが濃くなるというか、農業的な特産品が多く売られているというか、とにかく、他の街とは感じが違います。

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芊芊はここでもガイドぶりを発揮して、雲林北港のことをいろいろと歩きながら説明してくれました。

「你知道嗎?北港的胡麻油、花生、花生油、蒜頭、醬油、北港飴、蠶豆…等為聞名全省之特產」

(知ってる?北港のゴマ油や落花生、落花生油、ニンニク、醤油、北港飴、ソラマメ・・・・などはすごく台湾全土に知られている特産品なんだよ)

確かに大量に積まれたこれらの農産物が店の軒先にはたくさん、置かれていました。油の店も多くて、台北の迪化街と雰囲気はちょっと似ていますが、品揃えはまったく異なります。とにかく大量にうずたかく積まれているのが特徴で、こんなにあって売れるのだろうかというぐらい豊富に店先に置かれています。

  大量すぎる花生。種類がいろいろとあります。
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 有名な北港蒜頭。とにかく大量。 
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  蠶豆。日本で言うところのソラマメ。
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 北港飴とか新港飴と言われている糖菓。日據時代からある伝統的な飴。
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 北港狀元餅(大餅)。北港の日香珍は老舗で有名。
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 北港の特産醤油。
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 麻油や花生油、香油などの食用油はとにかく種類が豊富。
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芊芊はいろいろと歩きながら、詳しく説明してくれるし、雰囲気もいい街並みで一本道。各店も見やすく、ちょうど各店が開き始める時間ぐらいで、活気も出始めたところでした。さらに神具店が多いのも特徴で芊芊が気にいったのはQ版(キャラクター版)の神様グッズ店。途中で寄っていろいろと見ることになりました。
北港天庭公仔店

芊芊がとても欲しそうにするので、買ってあげようとしましたが、自分のお金で買わないと御利益がないとのことで、決心して自分で買っていました。500元ぐらいだったかな?詳しくはちょっと憶えていないのですが、お札をいっぱいもった神様の人形だったような記憶があって下の画像のような感じのものでした。

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「我很開心的」 (超うれしいよ) 芊芊はニコニコしながら大切な神様グッズをバックにしまいました。

芊芊は名前も「錢錢」と重ねてつけていて、貧しい家に生まれなかったら好きな勉強をして、酒店に上班せずに暮らせたのにという重いが人一倍強い子で、有錢家になれるようにいつもお祈りしていました。基本的にはケチなところがちょっとあって、若い娘にありがちな派手な暮らしや遊びをあまり好みませんでした。雑誌を読んだり、文化遺産や宮・廟をまわるのが好きな子で歴史や語学が好きで、私自身も今までのブログに綴ってきたように彼女のもついろいろな知識に驚かされたことが何度もありました。彼女は神様へのお祈りは大好きなのですが、いかにも神様というような偶像や彫刻ではなく、可愛い神様にこだわるところは、やはり現代的な少女っぽいところもあって、とても面白かったですね。

さて、これからもうひとつ芊芊が楽しみにしている五路財神の総本山「北港武德宮」へ行かねばいけません。
今日も芊芊の足取りは極めて軽く、昨日とはうってかわって今日は極めて暑い日差しが照りつける中、私たちは手をつないで再び歩き始めました。

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