さて福勝亭で吃飯していると、ご飯をおかわりしてパクパク食べていた芊芊が、何か思いついたような顔をしています。この顔をするときは、いつも自信たっぷりに意見を言います。だいたい表情を見ていると芊芊の考えていることがわかるように少しなってきました。

「你申領汽車的駕駛執照比較好!一起去旅行吧!」

(自動車の免許とるのがいいよ!一緒に旅行行こうよ) 

まったく、このお気楽娘は次から次へといろいろなことを思いつきます。

私は当然、日本の普通車の免許をもっていましたが、当時はまだ、日本の免許を交流協会で台湾の免許に切り替えることができず、取りにいかねばいけませんでした。芊芊の提案は私に車の免許をとらせて、出祖車(レンタカーのこと)を借りて、小旅行に行こうというものでした。出祖車の代金は半分出すからと言ってききません。

しかし、そんなに簡単に台湾で運転免許が取れるものなのだろうか?書類申請や方式もよくわからないし、厳しい道程があるような気がしました。しかし、芊芊が、PCで皆、必要書類はダウンロードして手続きできるし、車の練習場もあるから大丈夫と言い張ります。台湾には「汽車駕訓班」と呼ばれるいわゆる自動車学校があって、そこで練習すれば絶対に落ちないし、私が中国語とかの手続きを手伝うからといってききません。

さらに芊芊はもう、私が駕駛執照を取得すると決めていて、旅行の行き先の話に今度はなりました。彼女が行きたかった所は雲林にある例の五路財神の本殿?がある廟と南投縣にある清境農場など。熱心にすごくいいところだから前から行きたかったということを話し出して止りません。私もいきなりの展開でしたが、このような思いつきみたいなことは芊芊のいつものことなので、慣れっこになっていました。私も楽しそうに話す芊芊の顔を見ていると、手術という辛いこともあったし、この子は家もあまり豊かでなく、汽車(車のこと)に乗ってのドライブ旅行は一度もしたことがなかったようでした。芊芊が近くにいることは台湾社会を理解する近道でしたし、彼女のアドバイスは思ってみれば、間違っていたことはありませんでした。

「好的」

私もちょっと興味もあって駕駛執照を取ってみようと考え出していました。幸いこの日は星期五(金曜日)だったので、土・日といろいろな準備もできるし、彼女の言うとおり、ちょっと汽車駕訓班に行って練習すれば、大丈夫だろうと考えました。 

家に戻ると早速、芊芊は大張り切りで持ってきた自分のノートパソコンの網路で「台北市區監理所」のHPを開き、いろいろと丁寧に教えてくれました。驚いたのは網路の設定を私の無線ルーターを使って自分でしてしまったこと。この子は実際、頭が良くて、基本的に手際が良く、何でも自分で調べて対処していくことが得意でした。

駕駛執照を取得するには、基本的に 1 書類申請と受講料の支払い 2 身体測定 3 筆記考試(筆考) 4 路上考試(路考) という流れです。さらに驚いたことは筆記試験は日本語で受けることができ、網路を利用してパソコンで練習ができることでした。専門的な中国語にやや不安をもっていた私はこれで自信が芽生え、急にやる気になりました。  
台北市區監理所

皆さんもここに模擬試験があって、日本語を選択していけば練習できますので、ちょっとどんな感じか見てみるといいと思います。一度トライしてみてください。試験はやさしく、さらにこの模擬と同じ問題が相当数出ると芊芊が教えてくれたことにより、一気に気合いが入りました。ただし、やさしいと言っても結構、練習していかないと強敵です。40問あって85点以上が合格です。
交通部公路總局汽機車線上隨機模擬考系統

これは交通部台湾區國道高速公路局のHPです。英語版もあってよく標誌や交通規則を勉強しました。台湾独特の標誌(日本で言うところの交通標識)もあって当時、一夜漬けでしたが、芊芊と一緒にすごく勉強しました。
交通部台湾區國道高速公路局行車資訊補給站

さて、路上考試の方の対策を行うために、ちょっと左ハンドル、右側通行に慣れておく必要があると感じていました。アメリカ駐在時は車をもっていて、週末、フリーウェイなどを走っていましたし、スーパーやアウトレットにもよく行っていましたので、カンさえ取り戻せば大丈夫と思っていました。幸い、週末で練習する時間もあったため、早速、芊芊が網路で調べて、明日の土曜日、汽車駕訓班に行くことにしました。ちょっと離れた北投や文山にあって市内の近い所にはあんまりなかったのですが、芊芊の執念はなかなかのもので、網路で調べまくった結果、MRTの圓山站の近くに事務所がある復興汽車駕訓班という所に明日の土曜日に行くことになりました。いきなりなので、日本の自動車学校のイメージがあった私は大丈夫かなと思っていましたが、さすがは台湾、芊芊が掛號するとあっさりOK。あれよあれよという間に練習の予定が決まってしまいました。
復興汽車駕訓班

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toyota-vios-08

さて、芊芊の機車に乗って土曜日の朝一番に事務所みたいなところに到着しました。最初に案内されたのは小客車速成班というコースがあって2日間200分で3000元だったと記憶しています。しかし、芊芊が彼は日本で車に乗っていて、日本の免許を持っているとかアメリカにいて左ハンドルの車・右側走行にも慣れているいうような話をしたら、何と1日1500元になってしまいました。実際に受ける筆記考試の練習(コンピュータに打ち込んで回答するような感じなので日本の筆記とはちょっと異なる形式)と車に実際乗る路上考試のいろいろな練習をさせてもらえるとのことでした。

しかし、不思議なことにこの場所には練習場はありません。なんとちょっと離れた延平北路八段にある遠東駕訓班まで行きなさいとのお達し。地図見てもらうとわかりますが、結構離れていて遠いです。しかし、おおはりきりで世話好きな芊芊は元気いっぱい。私をバイクに乗せて早速移動となりました。

 この地図は七段までしか乗っていませんが、この左上のさらに先で中州の突端に近い所です。
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延平北路は一段あたりには老街もある台北の特徴有る通りのひとつで、三段から四段ぐらいにかけては台北の「機車街」として知られています。機車の販売や修理をしている小店舗がたくさん並んでいて、台北の人はここで中古の機車を売買したりすることが多いと言われています。また、競争も激しいため、価格も安く、また、別の店をハシゴして見られる利便性も高いと言えます。

延平北路

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しかし、中正路を越したあたりからは急に殺風景になってきます。しかし、芊芊の機車は風をきって快適にとばすのため、だいたい20~30分ぐらいでしょうか、あっという間に到着してしまいました。

  遠東駕訓班 
遠東駕訓班1

機車に乗っているハリキリ娘は到着するやいなや、自分が學開車(運転を勉強、練習すること)するわけでもないのに、気合いが入っています。事務所のような所に入るとさっきの手続きをした復興駕訓班 から連絡が入っているようで、100分間の練習(正確に言うと50分の2回レッスン・指導教官付き)が予定されていました。最初にちょっとした説明を受けて、さっそく乗り込んで練習となりました。芊芊も同乗を通訳代わりということで許されて後部座席に乗りました(さすが台湾、交渉でいろいろなイレギュラーなことが次々発生します)。

私は、運転は結構、得意でしたし、昔のカンを取り戻す程度と思っていました。しかし、はっきり言ってなめてました。
結果的には芊芊が私に決して安くはない駕訓班での練習を勧めた理由がこの日、本当によくわかりました。

この娘は確かにカンが良く、ちょっとくやしいのですが、彼女に勧められたことをすることにより、台湾社会を効率良く知ることができ、さらには台湾での多くの失敗を未然に防ぐことができたのです。

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