酒店の行政は大きく分けて次の3種類に分類されます。

① 店長・副店長のような店の経営責任を負う管理職
② 總經理や總控と呼ばれる店全体のトップマネージメントを行う役職とそれぞれの係ごとのスタッフ
③ 公關經理と呼ばれる直接女の子にかかわってマネージメントを行うスタッフ  

①の店長や副店長は日本と同じでトップに立つ経営責任者でわかりやすいのですが、②と③については細かく担当が分かれていて、実際に酒店全体を動かしているのは彼ら彼女らであると言っても過言ではありません。

まず總經理ですが、この役職は一切の酒店の雑事をコントールしています。酒や食品の手配、壊れたKTVや照明、インテリアの修理や交換の指示、制服の手配や小姐の使用するロッカーや休憩室の整備、給与を含む会計面のチェックと収益の分析などです。当然、彼の下にはそれぞれの担当者がいます。

次に總控と呼ばれる役職ですが、  150人ほどの小姐の上班うや下班、上枱や下枱といった小姐の時間に関する手続きと管理をしています。上班(出勤のこと)に遅れた小姐から罰金をとったり、何時何分に包廂に入り、何時何分に包廂を出たかということを正確に記録していて、客の料金と小姐の給料に反映させています。また、小姐の名簿や動向を管理していて、今日は誰が出勤していて誰がどの包廂にいるか、何時何分頃に下枱する予定かも全部理解しています。

幹部たちは客のお気に入りの子がどこにいて「點枱(指名のこと)」の可能性も總控に確認しています。ですから下枱する時に小姐が「控枱、控枱(手続き、手続き)」と必ず言われるのは、基本的に下枱した後は大廳にあるこの櫃台(カウンターのこと)に寄って、下枱の確認をしなければいけないからです。櫃台には出勤したときに小姐がサインしなければいけない名簿と押さなくてはいけないタイムカードがあります。これを知っている人はとても少ないのですが、私はこの名簿を見て、だいたい何人ぐらい今日は上班しているか、誰が上班しているかを確認しています。会社で言うと人事関係の取り仕切りみたいなところと言えます。

次に公關經理と言われるスタッフですが、教育經理という新入りの公關や領枱に酒店の勤務に関する約束事や罰金をとられる行為の説明、接客の仕方や服務、更衣室や貴重品の管理などを教え、さらにいろいろなトラブルを起こす小姐に指導したり叱責したりする仕事をしています。

そして、私たちが一番接するのが空姐を包廂に連れて来たりする帶枱經理です。一般に「行政」というと彼ら彼女らを指します。

領枱と公關のマネージメントの指令役の總控の指示を受けて空枱に並ぶ女の子の数の調整や幹部や客の要望を受けてニーズにあった女の子を捜してきて紹介したりしています。また、自分がついている子が他の包廂にいるお客から被點(指名されること)があると包廂に来て、「你要加點嗎?(あなたも彼女を指名しますか?)」と聞いてきたりします。また、下枱の手配や気に入らない子や自分と合わない子の換枱(卡枱とも言います)の手配もしてくれ「你要配小姐嗎?(また、女の子を配置しますか?)ということを聞いてくるはずです。

この帶枱經理は各酒店にだいたい複数いますが、店が混んでくるとあまりにもコントロールが難しく、女の子の手配のチームワークが乱れ、よく帶枱經理同士や幹部ともめています。すなわち、先着の客が本当はいたのに、まちがえてその次に来た客のいる包廂に先に空枱を連れて行ってしまったり、他の包廂が點枱(指名)していたのに忙しくてそれを言いに行くのを忘れていて、幹部から「處理(処理のこと)はまだできていないか」とせっつかれて気がついたりというようなことが頻繁におきてきます。従って、頭が良くて機転がきかないとすぐに失格という役割です。

実はこの帶枱經理が酒店で良い女の子を見つけるためのキモで、彼らと人間関係をもち、幹部と協力しながら他の客をだしぬくことができます、なぜならば、包廂にいる客は外の様子がわからないからです。自分が今、どれぐらいの待ち順位なのか、自分が捜している子はどこの包廂でどのような状況なのかは客は一切わからないからです。

他の帶枱經理ともめごとになっても実は一度上枱した女の子を戻すことはなかなかできません。従って、本当は點枱(指名)した順位が2番でも彼らと人間関係と信用があれば、第1順位の指名客を出し抜いて女の子を連れてきます。すなわち第1順位の客には、すごく酔っぱらってもう上枱できないとか言ってあきらめさせています。当然その包廂を担当している別の帶枱經理が怒ってきますが、ごめん、忙しくてまちがえたとか言って確信犯をやっています。第1順位の客に本当のことは言えませんからその包廂を担当している帶枱經理がごまかしているということがかなりあるのが実態です。

帶枱經理もよく考えていて、女の子たちから以前ついたあの客はつきたくないから、また来たらうまくはずしてとか、私を良い客のところにうまくまわしてと言われています。それと帶枱經理自身も女の子が厭な客についてトラブルになったり、店をやめられても困りますから、実はそのあたりを踏まえてうまく公關小姐をまわしています。

そのためマナーが良く、楽しく女の子と遊ぶ客は皆から好かれますから、信頼が信頼を呼び好循環が次々と生じます。しかし、一度、評判が悪くなったりした客は逆にどんどん悪循環が生じて、並べられる女の子も可愛い子や良い子は抜かれていますし、また、小費なしでどんな服務にも応じるアバズレ的な子をあてられています。そのような客は包廂の中でやりたい放題やっていますから、外の小窓から中の様子を確認しながらこのスケベバカ客には次に来ても良い子や新妹は絶対に見せないと彼ら彼女らは思っているのが事実です。  

これらの行政の補助をするのが助理で特に彼らは3~4人しかいない帶枱經理の隙間をうめることが多いため、彼らとの人間関係はとても重要です。帶枱經理は包廂のあるブロックごとに担当しており1人あたり10部屋前後の包廂を担当していますが、きめ細かく担当することは客の出入りが激しくなり、忙しくなってくると無理が生じてきます。従って助理の役割は極めて重要で、人間関係が幹部や客とあれば、なかなか来ない帶枱經理の替わりをマメにしてくれるのです。 

それと包廂の準備や片付けをするのが小爺(ボーイ)です。大概は大学生のアルバイトが多く、彼らは行政に含まれていません。従って、酒を持って来たり、新しいアイスボックスを持って来るときも包廂の中を覗き見することは厳しく禁止されていて、いつも後ろ向きに手だけを包廂の中に入れることになっています。それでも見えてしまうことがあって女の子が若い彼らに「偸看!、偸看!(盗み見!、盗み見!)」と言ってはやしたてたりして遊んでいますね。小爺は少し照れくさいのでしょうか、照れ隠しもあって真顔でいつも対応していて面白いです。

さて、行政に呼ばれた寶貝はちょっと大きめの制服をまた着こなしながら大きな声で私に言いました。

「今天我很開心你覺得我的服務讓你開心。也很高興認識你!」
(あなたが私の接客でハッピーになってくれたから、 今日は、私はとってもハッピーだったよ。あなたと知り合えたこともとってうれしかったからね!)

着替え終えた寶貝は走り寄ってくるような感じで立っていた私に近づいてくると、いきなり抱きついてきました。私もうれしくなってしまい、 寶貝の顔を見つめました。 包廂の入口にいた行政は、まったく表情も変えず、彼女を待っています。彼らはきっとこのようなシーンはたくさん見慣れているし、特段の感慨などはないのでしょう。寶貝は最後に「拜拜、下次你來、我們一定再見吧(バイバイ、今度来たときも私たちは必ずもう1回逢いましょうね)」と言って包廂を明るく出て行きました。

しかし、この可愛い寶貝と再会できるのは1ヶ月以上も先のことでした。

 画像はある制服酒店の大廳(ホール)です。今、この酒店は当時とは別の店名に換わっています。右奥が 控枱を処理する 櫃台(カウンター)の様子です。夜中の2時に撮影されたものですが、ガラーンとしているのは、すべて客が包廂に入っているからです。大廳に入った時に空いていると思っても実際には包廂がほとんど塞がっていることもよくあります。  

 なお、ブログの記事に関係ある画像を貼っていきますが、絶対に撮影は禁止ですので、ご注意ください。これらの写真は酒店のスタッフや幹部が撮影し、私に提供してくれている特別なものばかりです。また、画像の無断使用や流用については絶対に禁止です。ご理解をよろしくお願いします。   

杜拜酒店大廳