台北の市内の北部と南部を分ける川が基降河です。この河を挟んで南側に松山機場があり、その先に南港があります。北側には、士林夜市で有名な劍澤、大直、内湖と続いて行きます。101に上がって北側を見るとわかりますが、河をはさんだ向こう側に大きな観覧車が見えます。これが内湖の美麗華というショッピングセンターにある摩天輪です。特に夜は台北市内の夜景がきれいで、アベックや家族連れでにぎわっています。乗られたことはあるでしょうか?

私は内湖の美麗華にも台北に来て1年、入ったことがありませんでした。内湖や南港は台北の新興ビジネス街として年々開発が進んできていて、ビジネスの関係で時々、訪れてはいたものの、見るだけという状況でした。今はMRTが開通して便利になりましたが、当時はタクシーかバスで行くことが多く、少し台北市内から離れていることもあって普段の生活においては無縁の地だったからです。

6月の下旬、蔓蔓から簡訊の連絡がありました。簡訊の着信を見たとき、最後の上班だから来て欲しいという内容だとばかり思っていました。しかし、それは蔓蔓からの意外なメッセージでした。

「明天星期六、應該你不上班放假。你有空嗎?我已經下檔、昨天最後的一天。 因為我不想見你在酒店、所以我没有聯絡你。明天我們可以約嗎?」

(明日は土曜日だね。多分、仕事はなくてお休みかな。明日、空いている?私はすでに酒店をやめちゃった。昨日が最後の一晩だったんだ。あなたと酒店では逢いたくなかったから、だから私は連絡しなかったんだ。明日、逢う約束できる?)  

私は土曜日の日中はすでに別の用事が入っていたため、夕方以降ならば大丈夫と連絡をしました。私は晶華酒店(リージェントホテル)のレストランでも行き、食事でもしようかと考えました。しかし、彼女は五木の近くはあまりいい想い出がないからと言って、一緒に夜市に行こうということになりました。士林や劍澤は私にとってはとても想い出深い地なのですが、蔓蔓は「一起去士林夜市吧!」という提案をしてきて、夕方の六時にMRTの劍澤站で待ち合わせることにしました。

土曜日、6時。週末とは言え、まだ台北の夏至の頃は明るく、そんなに劍澤站はまだ、人が多くありませんでした。遅刻は彼女たちとのお約束みたいなものです。だいたい10分ぐらい待ったでしょうか。蔓蔓がラフな恰好でやってきました。いつもとはやはり印象がとても違っていて淡妝(薄化粧のこと)で来ました。元々、やや幼い顔立ちなのですが、普通の学生以外にはまったく見えません。きっと、士林夜市の誰もが彼女が酒店小姐とは思わないでしょう。

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士林夜市は何度か来たことがありますが、台妹と2人でゆっくりと来たことはありませんでした。会社の台湾OLや同僚と観光みたいな形で案内されたことが、台湾に来た当初にありましたが、「いつでも来られる」という気軽さみたいなものがかえって、足を随分、気がついてみれば遠ざけていました。

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7時近くなると士林夜市は夕方の夜風が気持ちよいこともあって、大賑わいを始め出しました。彼女が「士林夜市に来たらこれを食べなきゃね」といった感じで、まず、連れていってくれたのが有名な「豪大大鶏排」です。当然ながら以前に食べたことがあるのですが、いつも通りの行列。しかし、蔓蔓と手をつないでいろいろな話をしながら待つのは悪くありませんでした。

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士林市場(食べ物屋がたくさん入っている平屋のビル)の入口のところに円柱の広告塔のようなものがあるのですが、そこで2人で座って食べると、なかなかいつもながらの旨さです。この日は実は、私がお金を払おうとしてもすべて蔓蔓が先に払ってしまいました。「今天我要求見你。是我們的紀念日」(今日は私があなたに逢おうと言ったんだから。それに今日は私たちの記念の日だからね)というのが彼女の言い分でした。

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その後に彼女が私の手を引いて連れて行ってくれたのが「青蛙下蛋」です。台湾人はタピオカミルクティー(珍珠奶茶)が概して大好きですが、確かにこれも、タロイモでつくった蛙の卵のような黒い愛玉のプチプチというかモチモチというか、微妙な触感は何ともクセになります。

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2人でいろいろな店を冷やかしながら歩くのは、実に楽しく、特に蔓蔓は気が利く子でちょっと気になるような表情ををしていろいろなものを見ていると、詳しく解説してくれこともあって、今まで何となくしかわからなかったこともとてもよく理解できました。また、小さなゲームが夜市にはいっぱいあるのですが、2人で射的やスマートボールのような類、バスケットのゴール入れなど一時代前の懐古的な遊びをするのもとても楽しく、あっという間に時間は9時頃になっていました。夜市はこの時間ともなると大混雑で、この日は天気が良かったこともあり、人、人、人の波でした。

「我累累一點」 (私、ちょっと疲れた)

蔓蔓と私はちょっと一息ついて泡泡冰を2人で食べながら話していました。ちょうど 芒果が出だした頃で、とてもおいしくてちょっと遊び疲れた私たちの喉を潤すのにぴったりでした。蔓蔓の表情はいたずらっ子のような、無邪気な18歳の子そのもので、気軽なデートといった感じで、すごく気持ちが、ゆったりしたのを憶えています。何か下心でもあれば、内心、次はどうしようかなんて考えるのでしょうが、私にとっては突然起きた蔓蔓の思いつきにつきあったような感じでしたし、完全な私下でしたから、ちょっと可愛い娘と出かけているといった思いでした。だから、まわりはすごい人で喧噪が確かにあるのですが、なぜか、蔓蔓といると気持ちが落ち着くようなそんな士林夜市の夜だったように記憶しています。

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 蔓蔓が急にいいことを思いついたように私に言いました。 

「你知道美麗華的摩天輪。夜景很美麗的。應該有免費公車從劍澤!一起去吧!」

(ねえ、美麗華の観覧車知っている?夜景がすごくきれいなんだよ。多分、劍澤から無料バスが出ているから、一緒に行こうよ!) 

確かに蔓蔓の言うとおり劍澤站からは無料バスが出ていました。摩天輪は夜の12時までやっているということで、まだ、時間も十分あります。

そして、私は蔓蔓とともに内湖へ。夜風が本当に心地よい夜でした。